北京五輪開会式

8 月 8th, 2008

文字が出て来てちょっとうれしかった。カウントダウンで漢数字が出て来た時はちょっと鳥肌が立った。

2008年8月8日午後8時(現地時間)と、中国の人が好きだという8づくしの日に披露した開会式のアトラクション。文字が出るたびにぐいぐいと引き込まれる。活字に見立てた張り子の一つ一つがドットになって文字を浮き上がらせる。「和」だ。カタチが少しづつ変わりなじみのあるカタチに。字体の歴史を振り返ったのか。

入場行進順もアルファベット順ではなく国名を中国の国名表記に置き換えて、画数の少ない順番に入場したそうでとてもユニークだ。中国では五十音やアルファベット順などの換わりに画数順が一般的なのだろうか。画面の英語表記の横に中国語表記があればもっとわかりやすかったんだけど。

Beijing 2008と筆文字で表現されたロゴが発表されてからずっと気になっていた。アルファベットを無理してあわせているように見えるからだ。アルファベットは用いずに漢字を用いて自国の文化を表現したアトラクション。漢字になじみのある自分にとってはとても親しみがあったが、漢字になじみの無い人にとってはどう見えたのだろうか。

カリグラフィーとの距離

8 月 8th, 2008

17時48分大手町駅。普段習い事で乗り換えるだけの駅にて初めて降りてみる。

第四回 MG SCHOOL作品展『カリグラフィー・スイスをたずねて 』を見に出かけた。スイスをテーマに様々な書体で作品が作られており、一つ一つの作品の完成度の高さに圧倒されて帰って来た。

△会場となった東京大手町・ギャラリーパレス

一年半前、この作品展に選ばれることを目標に、かなり時間をかけて準備して下書きまで行きながら、結局完成させること無くこの日を迎える。三年前上京した時の目標の一つでもあったのに、参加しようとせずにただの観覧者を選んだ。ただ逃げただけのようにも思う。当時クラスメイトで目標としていた方々やスクールを通じて知り合った方々はどんどんと上達してさらに遠い存在となってしまった。一度途切れた糸をもう一度ピンと張らせるのは簡単なことではないと思っていたが、この展覧会を見てさらに大変だということを思い知らされた。淡々とレポートするつもりだったが少し思いが強くなって冷静に見れないまま帰途につく。あんなに一生懸命になっていたカリグラフィーとの距離が今少し遠い。

文字モジトークショー01「片岡朗×岡澤慶秀」

8 月 2nd, 2008

14時42分JR五反田駅。暑い…。前回ここへ着た時は大雨。もう一度あの場所へしかも文字の話をまた聞きに行けるのが少しうれしい。

文字モジトークショー01「片岡朗×岡澤慶秀」を見に5tanda Sonicへ。広告やCMでよく見る丸明オールドのデザイナーである片岡朗氏と、ヒラギノシリーズのデザインや游ゴシックなどをデザイン/販売する字游工房のタイプデザイナー岡澤慶秀氏の講演を聞いた。

△左:岡澤慶秀さん(左側)。右:片岡朗さん。

お二方の文字のデザインをするきっかけからトークショーは始まる。岡澤さんとは世代がほぼ同じなので、大学の頃のEmigreNeville Brodyといったデザイナーのことや、Fontographerが日本に出て来た頃の話が自分と全く同じでとても親近感が湧いたが、ワープロの外字作成機能で卒業制作の書体を作ったというのは驚きだった。とても大変な作業だったのではないかと思うが、どうしてもやってしまいたい時は少々無茶なやり方でも作ってしまうのが学生らしいパワーなのかもしれない。

片岡さんは、展示会のプレゼンボードに文字を書く仕事がのちのち書体をデザインするきっかけとなったそうだ。一つ一つのエピソードが文字づくりの芯になっているように思えた。

そして、今回のイベントのメインとなった書体制作のデモンストレーションへ。

両氏の紹介した書体制作方法は全く異なったものだった。岡澤さんは字游工房での書体制作フローを紹介。漢字は、デザインの基本となる十数文字を下書きしたものをコンピュータに取り込み、それを基に数千字へと展開していくそうで、やはり組織で複数人で作業することを前提とした方法なのか、先日聞いた小塚昌彦さんがプレゼンした方法に近い気がした。

読み込ませた下絵にあわせて手際よくエレメントをくみ上げていき、10分程で一文字が出来上がる。基本となる文字を作れば、「木」や「日」といったパーツが蓄積され、それらのパーツを組み合わせてまた違う漢字が作られる。それを繰り返して文字は一つのフォントとして完成する。大きさが同じに見える点や線も、一つ一つの大きさや太さは異なり、微妙に調整することで同じ大きさに見えるようにしている。それぞれの部首や旁の大きさやバランスを瞬時に判断できるのは、おそらくこれまでの何万文字と制作した経験からくるもので、ご本人は何ともなさげに話していたが、すぐにできるものではないと思った。

△左:基本となる主要な文字「国」「東」を作ると、そこにできたエレメントを使って他の文字へと展開していく。右:下書きされたひらがな「あ」を読み込ませ、手際よくとレースしていく。使用しているツールは字游工房用にカスタマイズされたURW社のBezier Editorというもの。FontLab Studio5にはできない操作がいくつかあり少しうらやましかった。(日本語制作には対応していないが同様のツールがDTL FontMasterにBezierMasterとしてもセットされている。)

一方の片岡氏は全く違う書体デザインのアプローチをデモンストレーションしたくださった。

書体のデザインは骨格にあると言う片岡さん。気に入った全く趣の違う書体を重ね合わせ、浮かび上がった共通項を抽出しデザインを起こす。元となる書体は古典書体であったり普段書くような手書きの文字であったりだそうだが、どうやってその特徴を拾い上げ、さらにデザインとしてまとめるかというのがデザイナーのセンスなのだと思う。全く性格の違う骨格をブレンドすると、まとめるのが苦労するように思える2つをまた別のデザインとして作り出していた。とても大胆なアプローチが興味深かった。

△左:2種類の文字を重ね合わせ浮かび上がる線を探っていく。右:検討されたエレメント

片岡さんは「行けると思えたものを作っていく」と仰ったが、何をもって「行ける」と判断できたかというのが一番関心のあるところだ。おそらくそこが書体の一番の肝になるのではないかと思うが、アイデアスケッチや下書きはなくても画面の中で試行錯誤が繰り返されてその肝をつかみ取り、カタチにしていくのが片岡さんの見せ所になっているのだと思った。

制作のプロセスは話に聞いたことはあったが、ここまで直接的に書体のデザインアプローチと制作方法を見たことは無かったかもしれない。しかもそれをライブで見ることができたのはとても面白かったと思う。トークショーではあったが文字づくりを「魅せる」イベントとなっていてとても楽しむことができた。

文字はエロい

7 月 21st, 2008

上京して間もない頃、国分寺で開催された「ハーブ・ルバリン展」でこの本と出会った。タイトルを見て思わず手に取ったが中身はエロくも何とも感じない。ところが表紙にある堂々としたローマンキャピタルは何とも艶かしい線をもっている。お客さんお目が高い、こいつは買いですぜ、と展覧会を主催する古書店の主に耳打ちされたこともあり、財布へと手をやって中身と相談する。EROSは号を経るにつれどんどんよくなり、本当はVol.3のマリリン・モンローの写真が掲載されたものが欲しかったが(これは少しエロい)、当時始まろうとしていたプロジェクトの資料にも使いたかったので、EROSとはっきりタイトル文字が写ったVol.1にした。古書店の主は、Vol.1の方が希少で買いですぜ、旦那。と言うが、やっぱりマリリン・モンローに後ろ髪を引かれている。

アイデア 329号のハーブ・ルバリン特集号に「EROS」は掲載されていた。ハーブ・ルバリンの業績を振り返る上で欠かすことができないこの雑誌、主の勧めた訳がわかった。あまりそういうところには興味が無かったが、ピンピンに尖ったエッジをもつタイトル文字はとても引きつけられる。紙面に用いられている書体の線は艶かしく、印刷のトーンや文字の揺らぎが心地よい。EROSの文字は自分にとって十分にエロい。

活字鋳造体験会

7 月 12th, 2008

12時48分京急電鉄南太田駅。今年の梅雨はどこへやら。「築地活字」が催す活字鋳造体験会に参加するため、金属どころか自分も溶けてしまうような真夏のような日差しを浴びて、地図を片手に横浜市南区にある目的地へ向かう。

△左:築地活字。右:整然と並んだ6台の活字鋳造機

工場のような建物をイメージして来たが、活字棚の木目を基調にしたショールームのようなきれいな室内に驚かされる。印刷所や鋳造工場ともなると汚れても仕方がない格好をしてきたが、そんな心配はなさそうだ。明るい室内の右手には活字が収められた棚が並び、左手には6台の鋳造機が整然と並んでいる。自由に出して見てもよいとのことで、カメラを片手に拝見させていただいた。参加者がだいたい揃った所で体験会は室内の説明から始まる。代表の平工さんに概要を伺い、続いて職人の大松さんから鋳造行程について解説していただいた。

△左:活字の棚について説明してくださった築地活字代表平工さん。右:鋳造行程について解説してくださった大松さん

△左:活字棚に収められた活字。右:母型棚に収められた電胎母型

△左:八光自動活字製造機。右:右から左へ徐々に細くなる回転軸をベルトで繋ぐことによって活字鋳造機のスピードを変化させることができる。

△左:鋳造用の地金。原料は鉛・アンチモン・錫などで主に中国などからの輸入。右:溶解温度は約350〜400度くらい。真夏のこの時期は温度の調節が難しく、しかも室内はかなり温度が高い。入れるとすぐに溶ける。

△左:母型をセットする大松さん。右:参加者一人一人が名前の一字を鋳造操作することができる。うまく真ん中にあわせないと文字がずれてしまい使い物にならない。ちょうど収まったと思っても大松さんの目にはずれがすぐにわかり修正してもらった。

△左:出来上がったばかりの活字。大松さんは平気で持っていたが、実はかなり熱く思わず落としそうになる。右:築地活字の見本帳用に用意されている組版。

金属活字の説明をしながら、当時の事情を解説いただくにつれ、話はだんだんと昔話へ。金属活字が主流だった頃、一字足りないから作ってくれと夜中でも起こされたそうで、24時間365日休める日がなかったぐらいだそうだ。全員で慰安旅行にも行けることが無く誰かが留守番をしていなければならなかったそうである。これまで大松さんが携わってこられたさまざまな担当でのエピソードが面白かった。

最後に参加者の一人で、かつて印刷所を営んでいた方が持参されたライノタイプの金属活字や、およそ1cm角の中に49もの文字がある金属活字などを見せていただいて、活字鋳造体験会は終わる。

写植さえ知らない世代は金属活字などさらになじみが無い。しかし、最近は金属活字が特集される雑誌も多く、凸版ならではの仕上がりの風合いを求めて、若いデザイナーからの発注も多いそうだ。

△左:指先より小さい中に49文字が入った活字。母型はベントン彫刻機で製作されたものだそうだ。右:大型金属活字とその解説シート。

△:Linotype機で作られた活字。

△:お土産としていただいた宋朝体の活字。「彦」を鋳造体験した。

たまたまネットで見つけた活字鋳造体験会。不定期のようだが時々催されているようで、これからも体験できる機会はありそうだ。

トークイベント『小塚昌彦 活字三代を語る』

7 月 5th, 2008

多くのベテランの中に、一人青年がちょっと顔をのぞかせるように映っているモノクロ写真が印象的だった。写真の中の若い小塚さんが、その後大きな仕事をいくつもこなされ、今、目の前で半世紀以上にわたる書体デザインの変遷について語っている。写真の中の小塚さんが、目の前で紹介される資料とともに徐々に現在に近づいてくるような感じがして不思議な気分になる。

金属活字、写植、デジタルと小塚昌彦さんが関わった活字三代にわたる仕事を、貴重な映像や資料を交えて紹介してくださり、文字の成り立ちから制作方法まで見ることができた。ベントン活字彫刻機など実際に稼働している様子を映像で見る機会はあまりなかったし、文字の墨入れの映像はスピードがとても速く(フィルムのスピードのせいではないと思う)手仕事の「技」を知った。時代を感じさせる写真を多く見ることができたせいか、時代背景と書体制作の移り変わりの関係が興味深い。国際貢献的な仕事もされる中、海外の紛争によって調査を中止しなければならなかった事業もあったそうで「タイポグラフィーは平和でないと育たない」という言葉が印象的だった。


左:三代のうち、デジタルの代表作Adobeの小塚ゴシックと小塚明朝。制作当時使ったという専用デザインツールで書体制作のデモンストレーションも行われた。右:会場となったCCAAアートプラザ(旧四谷第四小学校)

一代約20年、その一代の中にも細かく見れば少なくとも二代から四代含まれ、実は六代と言えるかもしれないと小塚さんは話された。代の移り変わりを体験することさえなかなかできるものではないのに、それを2回経験して三代にわたって、しかもその都度、適応するための新しい工夫に取り組まれたと思う。自分の約十五年を振り返てみる。学生時に手動の写植機を使って植字の実習したことはあったぐらいで、当時ちょっとした車が買えそうなくらいのMacintosh IIcxとLaser Writer, Fontographer3.1を使ってFont制作を始めた。就職する頃にはすでにMacが主役で、ごくたまにディスプレイ書体を写植で発注するくらい。「私は写植を経験しました」とは言いがたくずっとデジタル、しかもデスクトップで扱うことが中心だった。あと五年で約二十年経ってしまう。今後の変遷は物理的なものではなくてフォーマットの移り変わりになるのかもしれないし、表示媒体に影響を受けるかもしれない。世代が移り変わる時点で施された工夫を知ることが、今後の書体制作のヒントになりそうな気がする。変遷を知ることは大切だなと改めて思うのです。

「FontLab Studioややこしい!」とか日々ブツブツ言いながら作っているが、資料として拝見した大掛かりなものに比べると設備はとても恵まれていると思う。移り変わりを経験ことを気にする前に、こんな便利なツールを手にしておきながら20年経ってなんにもできてない方がもっと恥ずかしい。

朗文堂 新宿私塾特別公開講座 小さな勉強会『小塚昌彦 活字三代を語る
字游工房 もじマガ 文字の巨人 小塚昌彦さん

三宅康文展『文字は生きている』

6 月 28th, 2008

練馬区立美術館午前10時17分。雨を心配しながら自転車で行ってみる。いつも電車から見える建物。こんなに近いとは思わなかった。しかも文字の展覧会をここで見れるとも思っていなかった。

モリサワ「じゅんファミリー」、ニィス「JTCウインファミリー」をはじめとする書体デザイナーとして知られる三宅康文氏の個展を見に行った。2つの大きな展示室それぞれを「文字デザイン」と「文字アート」にテーマを分け、デザインの展示室ではこれまで手がけてこられた書体の紹介や新作の書体の展示、もう一方ではシルクスクリーンの作品を中心に展示されていた。「文字デザイン」の展示では、「じゅん」以外にも「ダイゴ」「ケアゲ」など良くお世話になった書体から、仕事であまり使う機会がなかった写植世代の文字も展示されていた。大きな文字は全て黒い紙を切ったもので展示されていて、きれいな切り口にも「手」から生まれた線という印象を受ける。一方の「文字アート」は趣が大きく変わり躍動感ある文字のアート作品が展示されていた。2つのテーマが静と動のように対比されているように思えた。


左:会場で配られていたDMと書体見本シート。右:練馬区立美術館

三宅氏ご本人が在廊されていたのでお話をお伺いしたいと思ったが、取材中だったため残念ながら所用もあり後にする。もう少し早く気がつけばよかった。

ズーン、ズーン、ズーン

6 月 26th, 2008

初めてCMを見た時は「ズーン、ズーン、ズーン♪」って言ってると思ってた。ニューヨーク在住の恩師の娘さんが「Zoom-Zoom」っていうんだよと教えてくれた。当時、海外でのキャンペーンではもっと「ズーム、ズーム」を強調して展開してたらしい。

スポーツを際立たせて車種を展開するMAZDA。この度、グローバルビジュアルアイデンティティーを取り入れてサイトのリニューアルを行った。なんと言っても注目は「マツダフォント」の導入。ようやくCMも見ることができた。70年代末のスーパーカーブームを知る世代としては、スポーツというともう少し泥臭い印象があったが、今はもう21世紀、もっとクリアで上品な印象を持った。車の名前だけでなくビジュアルポイントとしてサイトの一部にも使われている「マツダフォント」。カタログなどにも、どのように使われるのか楽しみだ。

ところでマツダの車で好きだったのはコスモ。初代は初代で、2代目はあのゴツさがなんともいえなかった。(マツダではないけど)ロータス・ヨーロッパという車もたまらなく好きで、ちょっとクセのある感じが良かった。

第3回カリグラファーズ・ギルド作品展

6 月 22nd, 2008

午後12時02分八重洲ブックセンター本店前。第3回カリグラファーズ・ギルド作品展を見るため小澤さんと待ち合わせる。会場はギャラリーくぼた。4つのフロアに集まった約200点以上の作品を見ていく。古典、モダン、和欧の競演、レリーフなど表現方法はさまざまで見応えがあった。お目当てのカリグラファーはどちらも文字だけで作品を作っていて、緊張感があってかっこ良い。文字の強さを感じる。そのうちの一人、白谷さんに会場で会っていろいろと話を伺った。

作品の他にもう一つお聞きしたかったことがあった。パッケージデザインをする上でカリグラフィックな文字も欲しい時があり、その可能性についてお聞きした。もちろん自分でも書きたいと思っているが、多様なデザインの方向性が必要な場合などを考えると、お願いしなければならない場面もでてくる。デザインと作品の違いなど、カリグラファーとしての意見を伺うことができて、心配していたことが晴れた気がした。実現できる機会を作れるようにしてみたい。


いただいたDMと会場で配られていたThank youカード

この作品展は7月より仙台、岡山、大阪と巡回するそうです。

ICOCA with 竹

6 月 20th, 2008

最近所用で関西へ戻ることが多い。兵庫県に住んでいた頃は阪急電鉄を利用することが多かったが、新幹線からの乗り継ぎはJRの方が便利なので、帰郷時には良く乗るようになった。JR西日本の車両にも情報モニターが付くようになり、エンドレスでクイズやCMが流れている。


JR西日本のICOCAをマスコットキャラクターのカモノハシのイコちゃんがPRしている。吹き出しにセリフ。選ばれた書体がモリサワの「」。イコちゃんの声にぴったりだったのが「竹」だったのだろう。

「竹」は直線的なデザインでありながら、自然な骨格を持っているので、角張ったカタチをしているのに硬い印象は無い。細かく見ていくと、交差部の画が込み入った所の濃度を調整するために、太さに変化を付けたり、斜線同士の交差部も、まっすぐ交わっているように見せる錯視補正がされている。欧文でもちょうどXの交差部に施すような補正を「竹」では至る所で施しているようだ。直線的な画の構成で、実は画面表示にも向いているんじゃないだろうか?(考え過ぎか?)使うときにそこまで詳しく見ないけど、「竹」は和のテイストがあってカジュアルな印象が出せるのでパッケージにも使ってみたいなとずっと思っている。

この書体は、かつて行われていた「国際タイプフェイスコンテスト モリサワ賞1993」で銀賞を受賞した書体で、長い間暖められてモリサワライブラリに加わった。作者の竹下直幸さんは和欧問わず書体に詳しく、街中を一緒に歩いていると目の前の書体を指して書体名を教えていただける。ご自身のブログでも2006年の一年間「街でみかけた書体」という企画を続けられていたが、当時まだリリースされていなかった「竹」を街中で発見したときの感想を伺ってみたい。

10分=600秒

6 月 17th, 2008

あれよという間にTypeCon Buffalo開催までいつの間にか一ヶ月を切り、時間とは経つのが早いなと感じる。今年は去年より開催が二週間程早く、余計にそう思うのかもしれない。あいにく今年はTypeConには行けそうになく、さてどうしようかと気持ちだけがフワフワしている。

TypeConブログには今年のType Critiqueの要項が案内されている。昨年同様Matthew Carterさん、John Downerさん、小林章さんの三氏を迎えて行われます。受付方法がこれまでより若干変更され、まずは初めての人を優先しようということのようで、席が空いていればこれまで参加したことのある人も登録できるようです。「また行って修正を見てもらおうと企んでることがバレたか?」と思いつつ、今年は行けそうに無いのでもう心配しなくていいか…。

その他の要項はこれまで通り、

・持ち時間10分
・1書体のみ(ファミリーでの提出はダメ)
・プリントアウトしたものを提出(ノートパソコンなどでのプレゼンはダメ)
・もちろん英語で質疑応答。(小林さんが居るから日本語で大丈夫という訳にいきません。John Downerさんに「ちゃんと英語でやってくれよ」とクギを刺されます。)

昨年は、こういうルールを知らないまま行ってしまい、ロビーに貼ってあった要項を見て慌てて前の晩にホテルで編集し直した。英語は片言英語だった上、緊張してほとんど喋れませんでした。批評してくださるお三方用にプレゼン用のシートは3部あった方がいいかもしれません。枠は10席しか無いので早めに応募名簿を見つけて名前を書き込みましょう。

10分と聞いて短いと思っていたが600秒と思えば長く感じる。終わった後で今までで一番貴重な10分だったかもしれないと思った。

関連記事:
TypeCon 2007 Typecrit video

秀英体の前途を祝して

6 月 14th, 2008

こういう映像を見るだけで、ちょっと血液の動きが強くなるのがわかるのが不思議。秀英体のページではなく会社のニュースページで見つけた。

大日本印刷株式会社 『仕事の達人 DNPユニプロセス 高橋耕一』

3年程前に市谷の工場を見学させていただけるチャンスがあった。役割を終えた金属活字の鋳造、組版の部屋を見学し、次から次へと受け継がれた歴史を一気に振り返った。今、デジタルフォントとして新たに歩みだしている「秀英体」。平成の大改刻をとても楽しみにしている。今日は裏方として支えているある方の特別な日。祝福に添えて秀英体のことを記しておきます。

大日本印刷株式会社 秀英体

関連記事:タイププロジェクト日記より
DNP 市谷工場

中国書体デザイン

6 月 12th, 2008

昨年小林章さんが審査員として加わった中国書体メーカーの書体デザインコンペの結果を見つけた。小林さんの日記で紹介され、中国の書体デザインのレベルが上がっていくのではないかとのコメントを読んで気になっていた。

方正字庫 字体大赛
審査の模様

中国語は読めないので英語での概説。
The 4TH “Founder Award” Competition on Chinese font Design and Poster Design

2値ではなく多値のデザインがあることに驚かされたが、グレートーンをデザインに取り込んでいて墨絵を思わせる書体もある。アウトラインデジタルフォントを考えれば2値で制作するのが常識なのかもしれないが、それが自由度を狭めている可能性もある。画面表示やFlashでの表示を考えると2値にとらわれすぎるのもナンセンスなのかもしれない。筆画のぶれやにじみなど、静止しているのに動きや時間を感じるものもあって、アウトラインフォントの枠を超えた可能性を感じさせられた。確かにBitFonterなどを利用すればグレースケールやカラーで表現することも可能でおもしろそうだ。

過去三回の(と思われる)結果も掲載されていた。

いつも和文を見ると欧文のデザインをするならどうするかということを考えるので、バラエティーに富んだ書体を見ると、いろいろと手を動かしてみたくなる。

お隣の国なのにあまり知らない中国や韓国の書体事情。今Arabicはとても注目されている。CJKV(Chinese-Japanese-Korean-Vietnamese)も、話題を提供していけるようにしたいと思う。

韓国と中国の文字に関する記事。
誠文堂新光社
アイデア 307に「ハングル書体デザインの現状」
アイデア 327に「現代中国の書籍設計」「[論文]中国におけるグラフィックデザインとタイポグラフィの歴史的発展に関する研究 1805-1949 文:孫明遠」

Ianさんとの文字茶会

5 月 31st, 2008

JR新宿駅東口改札前15時07分。待ち合わせに現れないIanさん。仕方なく電話してみる。英語がネイティブの方に自分から電話するなんて初めてじゃないだろうか。すぐに電話は通じて中央東口で待っていたようだ。メールでの書き方が悪かったかな。遠くから大きな体を揺らしてIanさんが歩いてくるのが見えた。

4月上旬に初めてお会いしてからメールでやり取りをはじめ、お互い都合がつかず流れてしまわないか心配だったが、ようやく実現したティーミーティング。折角の機会だしと思って小澤さんと出版社に勤めていて欧文書体にも詳しい吉野さんを誘って文字がらみの話を楽しもうと企画した。

あいにくの雨のなか数件歩き回ってようやくアルタ横のカフェに陣取る。お互い自己紹介をして一人づつ作っている書体を見せたり携わってる仕事のことなどを紹介しながら、いろいろと質問をやりとりした。話は脱線するし適宜質問するし雑談的にできたのがよかった。

Ianさんは日本にある文字に関するうわさ話も良く知っているし、小澤さんの書道についてもいろいろと聞いていたし、仕事で日本語のテキストを使うこともあるらしく、吉野さんが持って来た小説の組みの句読点のアキについて質問していた。当たり前と思っていることも、違う視点から見れば「なんで?」ということがわかっておもしろい。

自分の作品の英語での説明など反省は多かったが実現できてよかった。日本にも海外から来た文字に関心の高い人がたくさんいて、今回のことできっかけを大切にすれば広がって行く実感が得られた。また企画してみようと思う。

ところでIanさんによると今年のTypeCon会場はBuffaloはやっぱりちょっとおっかないらしい。下調べでいろいろと調べてBuffaloには観光名所もあまりも無いらしいし、治安がやや不安定らしいというのも知っていたが、実際に話で聞くと臆病者の性格が想像を膨らませてしまい余計心配になった。

TypeCon 2007 Typecrit video

5 月 23rd, 2008

昨年初めて出かけた海外のタイプコンファレンスTypeCon 2007 Seattle。その際に受けてみた10分間書体批評(10 minutes type critics)の模様の音声がYouTubeにアップされています。

TypeCon Seattle 2007: Typecrit 1 of 4

その場ですべてを聞き取ることは無理だろうと思い、iPodを使って全ての参加者の批評を録音。その音声をもとにEben Sorkinさん(彼もCritique参加者の一人)が写真やその時に使った書体見本などをうまく編集してまとめてくれました。

この10分間書体批評はMatthew Carterさん、John Downerさん、小林章さんの3氏が参加者が制作した書体を10分間で批評してくれるというTypeCon恒例となったイベント。10人の参加者それぞれに与えられた時間は10分。3氏それぞれの書体についての意見が交わされ、時には観客からの質問も飛び交います。


写真:コンファレンス会場受け付け横に張り出されたCritic申し込み用名簿。参加したい人が自分で書き込みます。現地でどうやって登録すればよいかわからず気がつくのが遅く、いつの間にかこの紙が張り出され、10人全てが埋まっていた。しかし、次に見に来た時に誰かが参加を取りやめていたので、あわててそこに自分の名前を書き込んだ(3番目)。

このイベント自体に参加して直接批評してもらうこともとてもよかったのですが、他の参加者への批評もとても勉強になります。こういう書体の時はこういう所に気をつけるのか、こういう所を見比べると全体を判断しやすいのかといったポイントをたくさん知ることができ、見るだけでも十分価値があると思います。

驚いたのは参加者の中にTDCで受賞したこともあるGabriel Meaveさんや、バウハウス大学でタイポグラフィーを教えているJay Rutherfordさんなど、現在活躍するデザイナーが多く参加していたことです。書体についていろいろな人から意見をもらおうという積極的な姿勢がうかがえます。

またこの時はGabrielさんを含め3人のメキシコの方が参加していましたが、どの書体もユニークかつ完成度の高い書体ばかりで、レベルの高さがうかがえました。来年のAtypIはメキシコで開催されるそうで、さらに書体デザインへの関心が高まっていくのではないかな。

最後のパーティーのときにJohn Downerさんに「修正してまた持っておいでよ。」と声をかけてもらった。今年の開催都市はBuffalo。行ったことのないAtypIにするか迷う。

追記:Typophileでの関連スレッド
TypeCon 2007 Typecrit video